イギリスのダルシマー

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この楽器についての相談を受けたのは、3年前。キットを組み立て、未完成のまま置かれていたものを久しぶりに完成させようということになったが、ピアノ調律の専門家に見てもらったところ、弦の太さと調弦が合わないようなので、調弦を教えて欲しいということだった。イギリスのThe Early Music Shopから購入したもので、簡単な説明書がついているだけだったという。

アメリカでもイギリスでも一般的なダルシマーは G (ピアノの真ん中のハ音より下のト音)が最低音だと思うが、それで良いのだろうか? 左右のブリッジの間隔も5度でよいのだろうか? Paul M. Gifford 著"The Hammered Dulcimer; A History"に掲載されているイギリスのダルシマーの調弦は、歴史的なものばかりのせいか、特殊なものばかりだった。

しかし、The Early Music Shopから購入したのであれば、そのメーカーはスコットランドのForbesのものである可能性が高い。Forbesのダルシマーを持っている人に尋ねてみると、やはりGが最低音で、左右のブリッジの間隔も5度とのこと。

その楽器がこれ。

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2001年7月の製品。23コース(ブリッジの数が12/11で2オクターヴ半)で、チェスの駒型のブリッジ。この楽器は低音側だけ1コース3弦になっている。これらを調べていた頃の
The Early Music Shopのサイトには、17コース(9/8?)という楽器もあったようだが、その楽器の画像は見ていない。17コースのダルシマーとしてはTK O'Brienの
Backpacker Hammer Dulcimerが売れているが、5度チューニングで9/8の場合、2オクターヴと1音となり、これだけあればある程度の曲が弾けるということだろう。

当初の手作り楽器はGiffordの本を参考にチューニングすることになったとのことで、話は終わったが、その年オーバーアマガウで開かれたHackbrett Weltkongress 2007で別のイギリスのダルシマーを見た。Jenny Coxonの楽器だ。メーカーを聞くと、
Oakwood Instrumentsとのこと。彼女の楽器は23コース(12/11)で、楽器本体に蓋を取り付けられるようになっている。彼女はスタンドの上に蓋を乗せ、その上に楽器を置いていた。

そして今年、修理の相談に送られた写真がこれ。川崎市に住むYさん所有の楽器。

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かなり古いイギリスの物という感じを受けたが、実際10年くらい前に、イギリスの楽器店で購入したものとのことで、制作者、年代などの詳細は不明。運送業者のミスでサウンド・ボードが割れてしまい、高額になっても修理できたらとの相談だったが、私の周辺の「作る」人たちに問合せ、結果としては修理しないということになった。修理するのは、作ることより大変というのが、彼らの共通した答えだった。

この楽器のバチはこちら。

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なんだか茶杓のよう。けれどイギリスのバチはJennyさんのも似たようなものだった。

そしてこれを書いている最中、調べていて見つけた楽器の写真がこちら。 (このページでJennyさんはMy Concert 12/12 Oakwood Dulcimerと写真を掲載しているけれど、私が見たものは確かに12/11だった。)

この中の一つが目を引いた。

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(Pav Verity's Other English Dulcimer)

この感じ、Yさんの楽器と似ている。やはりイギリスのダルシマーはこんな感じらしい。


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by yt-aoki | 2010-11-08 23:30 | 楽器 | Comments(3)
Commented by 小松崎健 at 2010-11-14 08:49 x
とても興味深い、イギリスのダルシマーについての考察、勉強になりました。確かに最後の写真、似ています。
Commented by むっ♪ちょい at 2010-11-20 16:32 x
ふざけた名前ですみません。
私も大変興味深く読ませていただきました。
私のダルシマーはJennyさんと同じくOakwoodですが
12/12です。

工房の方が最低音のDがあったほうが何かと役に立つだろうということで、付加されたようです。

Jenny さんは、Concertと別にAcornもお持ちだと思います。
(動画見たことあります)

南アイルランドのダルシマー奏者の演奏動画をみたことがありますが、やはり駒型ブリッジで、写真のような形、そしてシャムロックのようなサウンドホールでした。

Commented by yt-aoki at 2010-11-20 22:17
むっ♪ちょいさん、

情報ありがとうございます。12/12の音配置は想像通りでした。古い鍵盤楽器にショート・オクターブというのがあるので、1音追加するとしたら伴奏に必要とされる4度下というのはかなり可能性が高いと思っていました。

アイルランドのダルシマーはまだ不勉強ですが、やはり同じような形なのですね。

今のアメリカのダルシマーの多くはサム・リゼッタの影響を受けていると思われますが、それ以前のダルシマーにはイギリス風のものもあるのでしょうね。知れば知るほど興味がわいてきます。
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