泉の里コンツェルトザール

「思いは形になる。」

大昔、おそらくこのホールができてすぐの頃、ここでピアノのコンサートをした人が身近にいました。私は行かなかったのですが、「国分寺駅から坂を下ったところにある」という言葉を耳にした記憶があります。けれどそれっきり、私がダルシマーを始めて、小さなホールを探し始めてからは、なぜか遭遇することがなかったのです。

「国分寺の野川のほとりにあるすばらしい80席のホールが、引き取り手を探しています」
というメールが届いたのは先月の半ば過ぎのことでした。もちろん私に引き受けられるわけではないけれど、引き継ぐ人がいなかったら取り壊されてしまうそう。「興味がなかったらスルーして」と書かれていても見過ごせず、特に紹介できる人もうまい手立てもみつからないけれどと書き送ったら、「ぜひ見てください。いろいろな人に見ておいてほしいホールです」という返信。それで先月末に見にいこうとしたのですが、あいにく先方の都合が悪く、さらにクローズは9月末ではなく10月末と知り、それきりになってしまいました。

そしてふと気付けばもう10月も終わる。あわてて友達と調整し、ホールを見せていただくことにしました。

路地を入った突き当たりが母屋で左側にゲートがあり、
IZUMINOSATO KONZERTSAAL
の文字。その奥に白い建物が見えていました。ホールへのアプローチも素敵です。

入り口の扉をあけると、床は1段高くなっていますが、「靴のままどうぞ」と案内されました。目の前に受付用の長机があり、その向かい側の扉を開けるとホールです。こじんまりとして、けれど天井が高く、客席後方には小さな調整室もあり、天井からマイクも吊ってあります。尺高の舞台の上にはベヒシュタインのピアノ。上手の幕の後ろが控え室であり、ピアノを使わない場合にしまう場所ともなっています。

狭いけれど、うまく考えられていると思ったら、7年前に亡くなられたご主人の設計とか。

2階もどうぞと案内されて、控え室を出て階段を上るとそこにはキッチンがありました。そして奥の野川に面したところは、10数人がテーブルを囲めるサロン。打ち上げに最適な場所! 別のホールにもこういう場所が似たような配置でありましたが、なぜか暖かみがちがいます。前に見たところは、高級そうで冷ややかな感じがしたのに、こちらはアットホームなくつろぎがあります。ついつい座り込んで、長々とお話を伺ってしまいました。
ホールの2階席は1列だけですが、ダルシマーにとっては特等席。

サロンに飾ってある絵はご主人のお兄様の作品。そのほかにもそこここに、お人形や絵、オブジェが飾られています。ホールの外壁にいたのは、琵琶を弾く河童でした。

貸しホールとしても使われたけれど、自主公演もたくさん開催したそうです。それはホームページにも記録があります。そしてその公演が終わると2階のサロンで、楽しく語らったのでしょう。

帰りに見ると、ゲートの裏側には日本語で泉の里コンツェルトザールと書いてありました。

「ホールは箱ではない。」

ホールは、演奏家と聴衆がいてその中に響く音を通じて皆が交流する場です。そしてここにあったのは、この敷地の中でどうやったらよいホールができるかと十分に考えられ、コンサートにまつわるさまざまな事柄に対処できるように作られたものでした。そこにはまず、どういうコンサートをしたいのかという思いがあり、さらに絵を飾ることとか、もてなしの料理とかにこめた思いが加わり、その思いが形になったものです。公営の、どなたの希望にも、何にでも対処できますよというホールとは対極にあるものです。

「思いは形になる。」

帰り道、私の頭の中では、こんな言葉が繰り返されていました。

「思いは形になる。思いは形にしなければ。」

昔のものですが、ご夫妻が紹介された記事を見つけましたのでご覧ください。
http://chspmedia.sub.jp/mck/10/machihito.html
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by yt-aoki | 2011-11-01 01:00 | 音楽 | Comments(0)
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