ヨーロッパ音楽史の中のダルシマー

2010年に発行された金澤正剛先生の『新版 古楽のすすめ』を手にして、ヨーロッパ音楽史の中でのダルシマーを考えた。

ダルシマーはいつ頃からあるのかとよく聞かれる。似たような形をしたプサルテリウムは古くからあるけれど、ダルシマーはそれほど古い楽器ではないと思っている。

ダルシマーの最大の特徴は、弦をブリッジによって2対3に区切っていることだ。弦の長さが2対1の場合は1オクターヴ、2対3の場合は完全5度といって協和しあう音程になることは古代ギリシャの時代から知られている。この5度になるように区切られた弦を4本使うことで長音階を得ているのがダルシマーだ。

ブリッジは左に寄っていて、右の弦が長く低い音になるので、

  4     ド  |  ファ
  3     シ  |  ミ
  2     ラ  |  レ
  1     ソ  |  ド

という配置になる。これを上下に重ねることで、4度上の調、4度下の調ができあがる。つまり4の弦のファをドと読み替えて4度上の調が、1の弦のソがドになるように弦を加えると4度下の調ができあがる。

これは調性音楽の世界だ。

古代から中世にかけて、音楽は長調・短調ではなく、旋法という世界のものだった。旋律が1つのモノフォニーから複数の旋律がからみあうポリフォニーの世界。その後、メロディーの横の関係からハーモニーの縦の関係が見出されていく。ホモフォニーというのだそうだ。そしてポリフォニーとホモフォニーの共存時代は、16世紀末からバッハの時代まで続いたそうだ。

ヨーロッパ音楽におけるハーモニーの目覚めは15世紀の前半から見られるそうだ。中世とルネサンスの境をどこに置くかは諸説いろいろあるようだが、金澤先生は1400年では早すぎるし、1440年も説得力に欠けると言う。けれど確かにその頃から、ダルシマー(ハックブレット)も現れ始める。ハックブレットという言葉が音楽用語として最初に現れたのは、1447年と言われているし、図像も15世紀半ばから多くみつかる。そしてそれが一般化し、16世紀の理論書に描かれたことを考えると、音楽と楽器が密接に結びついていることを感じる。そして音楽と楽器が結びついているからこそ、ツィンバロム、ハックブレット、サントゥール、揚琴といった違いとなって現代に残っているのだ。

参考:16世紀のダルシマー
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by yt-aoki | 2012-04-28 12:50 | 歴史 | Comments(0)
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