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ピアノの祖先?(1)

ダルシマーはピアノの祖先ではありません。
もちろん私もダルシマーの説明で、「グランドピアノのふたを開けて、中の弦を直接ハンマーで叩くような楽器」と言うこともあるのですが、ピアノが誕生する前には3種類の鍵盤楽器がありました。オルガンとクラヴィコードとチェンバロあるいはハープシコードと呼ばれる楽器です。

オルガンの説明は必要ないでしょう。ただこれは鍵盤楽器ではありますが、もともとの音を出す仕組みは管です。パイプオルガンはたくさんあるパイプに空気を送り込んで音を出す楽器です。どこに送り込むかを鍵盤とストップで制御していると言えばよいでしょうか。

チェンバロ(ドイツ語)/ハープシコード(英語)は鍵盤を弾くと爪(プレクトルム)が弦をはじく楽器です。これは言葉としては14世紀末、図像としては15世紀初頭からあるそうですが、楽器として最古のものは、1480年頃のものだそうです。

そしてクラヴィコードは、鍵盤を弾くと鍵盤の先につけられた爪(タンジェント)が弦を打つことによって音を出す楽器です。
あれ? じゃあこれがダルシマー? 
この文を読むとそう思われるかもしれませんが、ちょっと違います。

ギターのフレットの上を強く叩くと音が鳴りますよね。別のフレットを叩けば、違う高さの音が鳴ります。その原理に鍵盤をつけた楽器です。ダルシマーはあらかじめ音の高さを定めた開放弦を叩く楽器、クラヴィコードは、開放弦のこの位置を叩けばこの高さの音が出るということを調べて、鍵盤に対応する爪の位置を決めています。もし一度に1音しか出なくてもよければ、1本の弦だけでも作れます。もともと弦の長さと音の高さを研究するための道具だったものを楽器に改良したものなのです。

音はとても小さいのですが、昔の音楽家はこの楽器を愛用してきました。例えば夜中に屋根裏部屋で練習していても人に迷惑がかからない、鍵盤をおさえる強さで音の強弱の変化がつけられる、おさえている間だけ音が鳴っているなど、音楽の練習にとても役に立つ楽器で、コンパクト。今で言うならポータブル・キーボードですが、弾き方でピアノ以上にニュアンスが作れる、練習に最適な楽器でした。

こういう楽器が存在した中で、ピアノは「音の強弱がつけられる大型チェンバロ」として開発されました。イタリア語で言うと、gravecembalo col piano e forte (グラーヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ)で、ピアノという名前はこのピアノ・エ・フォルテあるいは逆にフォルテ・ピアノから来ているのです。それを作ったのはバルトロメオ・クリストフォリ(1655-1732)というイタリアはメディチ家の楽器管理をしていた人で、1700年ごろ考案されたと考えられています。つまりピアノの祖先はチェンバロなのです。

では何故、ダルシマーがピアノの祖先と言われるようになったのか?
そこにはある一人のダルシマー奏者が関与しているようです。
by yt-aoki | 2012-06-19 09:21 | 歴史
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