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亡き友を偲び、娘を失った母を理解する

幼い子を残し、40代で逝った友がいる。
親しかった友人たちにもその死が知らされず、みな、後になってから墓参りをすることしかできなかった。そしてこの3年ほど、1年に1度、彼女の実家をその友人たちが訪ねている。音大のピアノ科を出た彼女のグランドピアノが弾かれずにあることが、母上の悲しみとなっていたのだ。

今回初めて私も参加することにした。皆で一緒に歌いましょうとファックスで届いた曲は、ダルシマーのレパートリーだった。それならばと、少女時代の彼女しか知らない私は、私の近況報告として、バックパッカー・ダルシマーを持っていくことにした。

墓参りの後訪ねた彼女の実家で、母の口から語られたその最後の日々と、彼女が愛した夫や子供たちから受けた母の苦しみは、聞いていてとてもつらいものだった。それから友人たちはピアノ伴奏で歌を歌い、私はそのメロディーに小さなダルシマーの音を重ねた。母上はダルシマーの音をきれいだと喜んでくださった。

その後で初めて私は、その母上が、仏画を描く人だと知った。書架にある仏像関係の書籍や、部屋に飾られたさまざまな仏画に気づいてはいたが、まさかその方が描かれたものとは思いもよらず・・・。写真で見せていただいた千手観音、壁に飾られた来迎図に、天を舞う天女たちの屏風。どれも穏やかで美しく、いつまでも見ていたいものだった。

それらを見て私は、母上が娘の死の意味をしっかりと受け止めている理由がわかったような気がした。仏画に描かれているものはとても細かい。その細かいものを一心に描きながら、母よりも描いた仏の心で、理解したのではないか。

「あの子がもっと長く生きたら、もっと苦しいことになったのではないかと思います。」

数日前テレビで見たドラマ「テレサ・テン物語」に出てきた若いフランス人の男と、彼女の夫が重なって見えた。
by yt-aoki | 2007-06-07 00:00 | ハンマー・ダルシマー
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