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ダルシマーの楽譜

昔、まだダルシマーを始めてそれほど経っていなかった頃、日本人向けの教則本を書いて欲しいと言われたことがある。当時から多少のアレンジはしていたし、そもそも自分が練習曲として選んだものは、自分でアレンジして練習していたものだ。

それからおよそ10年が経ち、この夏突然何が求められているのかを理解し、私は楽譜集を作ることにした。きっかけはハートストリングスのメンバーの「将来介護施設で演奏できるような、日本の曲をソロで」という言葉。

構想がまとまり、
・12/11という2オクターヴ半のダイアトニック楽器で弾けること
・1小節に1つか2つの装飾をいれて
・いきなり装飾入りの楽譜を見ても知らない曲はわからないから、メロディーだけの譜も添える

ということにして、日本の歌の選曲をし始めた。20曲くらい選んでみよう。
そうして選ぶうち、このくらいの古さ(明治期の唱歌など)なら、著作権も消滅しているのではないかと調べてみると、好きで入れたかったのにダメなものがある一方で、この作曲家ならOKということもわかってきて、著作権に抵触しないものばかりで20曲をそろえることができた。

著作権フリーなら、外国でも使ってもらえる。アメリカの先生にも贈ろうか? それならばタイトルと作曲者名のローマナイズも入れよう。目安になるテンポ表示も入れてと体裁を整え、9ページの楽譜集「日本の歌(1)」が出来上がった。

バックパッカー・ダルシマーで全曲を弾いてみると、2曲だけ調を変えれば良いことがわかり、一緒にバックパッカー・ダルシマー用の楽譜も作ることにした。

出来上がるやすぐに、明治時代から日本語で歌われている外国の歌の20曲集もできるのではないか? 数年後には「日本の歌」の続きもできるのではないかと構想が広がる。外国の曲も、「あおげば尊し」の原曲がアメリカの卒業の歌とわかったばかり。アメリカの先生には、「外国の歌」ができてから、セットで送ることにしよう。

こんな内情を書いて良いものかと迷ううち、HARD TO FIND の小松崎健さんがさっそくブログで紹介してくださり、早くも注文が入ってしまった。

ありがとうございます。

というわけでこの楽譜、1冊1,000円でおわけします。
yt-aoki@excite.co.jp あるいはtwitterなど他にご存知の連絡先まで、
冊数と、12/11(Dusty StringsならApprenticeやD10)用か9/8(バックパッカー・ダルシマー)用かを明記して、送付先をお知らせください。送料は当方負担でお送りいたします。



P.S.
直接楽譜には関係のないことだけれど、楽曲の初出を調べている最中、オリジナルの所在を「HYさんの私信による」と記載しているものを多数みつけた。HYさんは私の学科と元職場の先輩。仕事もちょっと特殊だったけれど、こんなところにも成果を残していたんですね。パソコンかついで図書館めぐりをしているとは、こちらの関係のことだったのでしょうか。いいなあ。今後もご活躍を楽しみにしています。
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by yt-aoki | 2011-08-24 22:37 | ハンマー・ダルシマー | Comments(0)

楽器の改良

日本にオークラウロという楽器がある。尺八にフルートのベーム式キーシステムを取り入れた楽器。考案者である大倉喜七郎のオークラと竪笛のアウロスでオークラウロ。日本の音楽史の中のトピックとしては聞いたことがあったけれど、その楽器が展示され、さらに描かれた楽器の展覧会との併催と知り、出かけた。
(大倉喜七郎と邦楽・美術に視る音色、大倉集古館、9月25日まで)

実は管楽器にはあまり興味がない。何故なのか、打楽器と弦楽器には興味があるが、楽器博物館でも管楽器コーナーはろくに見もせず素通りしてしまう。それなのに「描かれた楽器たち」というサブタイトルの「美術に視る音色」との併催と知り、興味を持った。邦楽もそれほど知らないのだが、昔、日本絵画の中の楽器を記録することに関わっていたという経験がダルシマーへの関心と重なり、江戸時代の絵画の中に揚琴がみつからないだろうかという期待になってしまうのだ。案の定今回も、雅楽器、琵琶、筝、三味線しか見つからなかったが、オークラウロに関する展示は興味深いものだった。

最初に大倉喜七郎という人物の紹介がある。そしてオークラウロが展示され、それを考案するにいたった過程が、雑誌記事で紹介される。特許資料に教則本、オークラウロ作品の公募資料や、講習会・養成所の記事・広告。とても興味深いのだが、根本的なところでの疑問が残る。

尺八にわざわざキーをつけて、本来出しにくかった音を出しやすくする必要があるの?

そう思いながらも、そうしたいと思った時代的な要請はよくわかる。ザルツブルグ式のハックブレット(クロマチック・ダルシマー)が出てきたのと同じ頃なのだ。クロマチックにしないと、他の楽器とのアンサンブルがしにくい。クロマチックでないと、忘れ去られていく。

ハックブレットはその後クロマチック楽器が主流となったが、オークラウロは・・・?

最近ハックブレットの楽譜にある曲を教えてもらい、私自身のダルシマーのレパートリーにした。それを演奏する際、その曲について調べたところ、1753年のタブラチュア(奏法を記した譜)が出典とわかった。1753年の楽譜なら、クロマチックのハックブレットではなく、私のダルシマーに近いはずだ。そう思って2つの楽器の音の配置を考えながら弾いてみると、ダルシマーの方が断然弾きやすい。ダルシマーでは初級、ハックブレットなら中級というくらいの差がある。

ピアノ、ギター、ヴァイオリンあるいはリコーダーといったよく使われる楽器、学校教育にも用いられる楽器を触っているだけではわからないことだが、ダイアトニック(全音階的)楽器の制約を、他の楽器と合わせられない不幸な事と捉えると、クロマチック(半音階的)にすることが楽器の改良だと思うのだろう。けれどそれは、本当に改良と言えるのだろうか? フィンランドのカンテレも20世紀にいたるまで5弦の楽器だったと聞いている。つまり音高の変えられない弦楽器の場合、5種類の音があれば、音楽になったのだ。(ネックがあって音高を変えられる楽器の場合は3弦が多いが、2弦でも成り立つだろう。)

ハンガリーのツィンバロムも、オーケストラと一緒に演奏するために今の形に改良された。今はそれが主流だが、オーケストラと一緒に演奏する必要のないところでは、もっと小さなツィンバロムが使われている。中国の揚琴も音量や音域が改良されているが、昔はタイのキムくらいの大きさだったのだ。

音楽をピアノのような楽器から始めてしまうと、クロマチックであることは必須となる。けれど、そうでなくても音楽はできると知ってしまうと、楽器の改良というのは、もっと別の方向があるのではないかと思う。
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by yt-aoki | 2011-08-20 01:30 | 楽器 | Comments(0)

ダルシマーの弦は?

ダルシマーはいつ頃からある楽器なのかとよく聞かれる。聖書の書かれた時代からあると思っている人もいる。古代アッシリアの壁画が最初だという説もある。ビザンチウムで12世紀に作られた本の象牙の表紙の図像が音楽辞典に掲載されている。でも私はもっと後の時代のものだと思っている。

聖書に書いてある、というのはアメリカでよく言われることのようだけれど、それは聖書を英語に訳すときにdulcimerという言葉を用いてしまったからで、元のアラム語では
sumponyahだそうだ。

大英博物館所蔵の古代アッシリアの壁画についても、長い間ダルシマーの最古の図像とされてきたが、復元の際に手が加えられ、誤解を生じる結果になったのではないかとされている。

12世紀の本の象牙の表紙、これは先ごろ亡くなられたダルシマー博士、David
Kettlewell氏がThe New Grove Dictionary of Music and Musicians(日本語版は「ニューグローヴ世界音楽大事典」)にも掲載しているが、私にはこの図は弦をはじくプサルテリウムとしか思えない。

プサルテリウムpsalterium (英語ではpsaltery)は中世のヨーロッパに多く見られる楽器で、三角形、台形、長方形などさまざまな形があり、それらの楽器をハープのように立てたり、ひざの上に寝かせたり、胸に抱えたりして奏する楽器で、指、爪、付け爪、短い棒などではじく。この棒が曲者なのだ。ダルシマーに熱い思いを寄せていると、これが弦を打つバチに見えてしまう。

絵を見分ける場合、バチの持ち方とブリッジがポイントになると思う。棒を持ってはじく場合と、打つ場合では、持ち方が違う。もちろんそこまで描き分けられているかどうかということは問題だ。弦を分割するブリッジは、ダルシマーにはかなり重要なポイントだと思っている。しかも弦の長さを2:3の割合とすることで5度の関係を作り出していること、それを4コース作ることで、1オクターヴの長音階が出来上がることも大きな特徴のひとつで、それはヨーロッパが起源であることを感じさせる。中世の教会旋法から長音階・短音階に移り変わっていく時代の。

     2 : 3

     ド + ファ
     シ + ミ
     ラ + レ
     ソ + ド

それで結局、ダルシマーが16世紀の音楽理論書に登場する頃には、クラヴィコードなどの鍵盤楽器やリュートなどもあり、ダルシマーだけが格別古い楽器というわけではなくなっている。実際ドイツ語の楽器を示す言葉としてのハックブレットHackbrettやハックブレットの図像は、15世紀の半ばくらいからみつかるそうだ。

そもそも同じ弦楽器といっても、はじく楽器と大きく違うところがある。例えばはじく楽器であれば、弦は植物のつるでも絹糸でも作れるけれど、打って音を出すには、金属の弦にかなりの張力をかけなければ鳴らないのではないか? とすればクラヴィコード(鍵盤を押さえると鍵盤の奥に立てられた金属が弦を打って音を出す楽器)と同時代だろう。金属が糸状に加工され、自由に使える時代にならなければ存在しない。そしてそれを漠然と鉄弦で考えていたのだが、最近ある資料に思いがけない記述を見つけた。

The Psaltery : an annotated audio-visual review of different types of
psaltery / Nelly van Ree Bernard. - Buren (Netherlands) : Knuf, 1989
     
プサルテリウムの本だ。あまり関係がないけれど、プサルテリウムとダルシマーの区別をするために、多少は知っておきたいという程度だったのだが、構造の注にこんなことが書かれていた。

Concerning the strings: 弦については
13-14世紀の有名な理論家Juan Egidio de Zamora あるいはJohannes Aegidius ZamorensisまたはJuan Gil de Zamoraとしても知られるが、著書"Ars Musica"
(ca. 1300, Vatican)の中で、psalteryにbrass(真鍮) と silver(銀) の弦を使うことを推奨している。

この後、三角形のプサルテリウムrotaにはgut(腸)、14世紀のペルシャではカーヌーンにgut and silk、また別の書にtwisted copper(撚った銅)と書かれているとの紹介が続く。

楽器の弦としては、鉄より真鍮の方が古いのか。それはわかるとしても、銀線とは。本当に使ったのだろうか?

真鍮弦をゆるく張った楽器。それはクラヴィコードのように小さな音しか出ないだろうし、今の楽器のように叩いてはいけないのかもしれない。
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by yt-aoki | 2011-08-18 14:56 | 歴史 | Comments(1)

弾きやすい調は?

ハンマー・ダルシマーで弾きやすい調は、12/11(左のブリッジに12コース、右のブリッジに11コース)という2オクターブ半の楽器の場合はト長調かハ長調です。

私が普段使っているDusty StringsのD35というモデルは16/15(左が16コース、右が15コース、メーカーによっては15/14のものもある)の3オクターブの楽器で、この楽器になると、ニ長調も弾きやすくなります。弾きやすいというのは2オクターブ分の音を持つからで、他の調が全く弾けないというわけではありません。そして、この大きさになると、12/11にはなかったD#の音があるので、真ん中のハの音から上に1オクターブの半音階が弾けるのです。時々その半音階を実演するのですが、今回はちょっと趣向を変えて、ハ長調(C)、変ニ長調(D♭)、ニ長調(D)、変ホ長調(E♭)、ホ長調(E)、ヘ長調(F)、嬰ヘ長調(F#)、ト長調(G)の音階を弾いてみました。



Dusty Stringsの場合、高音部にも理論上足りないD#, G#, B♭を作っているので、ト長調より上も同じように弾けます。つまり、メロディーだけ弾けばよいのであれば、結構対応できるというわけです。
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by yt-aoki | 2011-08-10 16:20 | 初めての方へ | Comments(0)

ハートストリングス発表会

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by yt-aoki | 2011-08-09 00:22 | イベント・コンサート | Comments(0)