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国立西洋美術館のポスターを見ただけで、何の予備知識もなく展覧会へ行った。JRの駅に張ってあったポスターは、「ダイヤのエースを持ついかさま師」という作品を用いたもので、描かれている人間の視線が気になるという程度だったのに、立ち止まって見ているうちに、なぜかこの展覧会には行かなければという気にさせられた。
出かけてみたら作品の中に「ヴィエル弾き」があった。ヴィエル、もっと通りの良い名前を使えば、ハーディーガーディー。ハーディーガーディは、ある時期下層民の持つ楽器とされていた。その後のある時期には、宮廷音楽家に注目された。そして20世紀が近づくにつれ忘れられ、20世紀の半ばから再び見直されるようになった。さまざまな地域にさまざまな名称と形態があるようで、一部の地域には演奏の伝統が残ったらしい。その扱われ方はダルシマーそっくりだ。ダルシマーもある時期、放浪する音楽家が用いたことで下層の人たちの楽器であったし、少し時代が下ると宮廷でも使われた。アメリカではピアノの流行と共に廃れたといわれ、1960年代のフォークブームで注目されるようになった。地域によって名称や形態が違うことも同じだ。ハーディーガーディーはハンガリーではテケルーというそうだ。ハンガリーのダルシマーはツィンバロムという。 作者ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593-1652)はフランスの画家、正確にはロレーヌ公国を中心に活動したというが、フランスのダルシマー(タンパノンあるいはサルテリヨン)についてはまだ調べてないので、そのあたりの地理も歴史も頭に入っていない。同時代のフランスのダルシマーについてのもっとも有名な記述はMarin Mersenneの"Harmonie universelle"(1636)の中にあるが、メルセンヌ以外にはあまり書いていないらしい。 西洋美術館の解説によれば、ヴィエルは15世紀以降のフランスではもっぱら「盲目の物乞いが哀れみをそそるために奏する楽器」とみなされ、16世紀の北方でも、ボスやブリューゲルが宗教的盲目への危険を諭す教訓的図像の中で、盲人を表す記号として用いたそうである。もしかしたらラ・トゥールが描いたヴィエルの近くにはダルシマーが存在したかもしれないのに、意味を与えられたヴィエルだけが描かれたのだろうか。 ヴィエルの近くにダルシマー、本気でそのようなことを考えているわけではない。ただ、ダルシマーの図像が少ないことを残念に思っているだけだ。 ■
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by yt-aoki
| 2005-03-23 00:12
| 音楽
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今日はハートストリングス練習会。1ヶ月ぶりの人が多い。中の何人かは、新しい曲を練習している。この練習会のお世話をするようになって6年目に入った。私が練習会場を確保したり練習日程のお知らせを出すようになった当初から参加している人が5人、昨年から参加している人が2人。昨年ごろから、自分が興味のある曲を探し出して、個人練習してくる人が増えてきた。もちろん仕事をしている人も多いので、練習会のときにしか楽器ケースのふたを開けないということもある。それでもよい、プロじゃないのだから。自分の生活の中で、自分の音楽を楽しむ。何ヶ月休んでいても、都合のつくときに参加して、新しい曲を覚える。それがハートストリングスのスタイル。
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by yt-aoki
| 2005-03-13 23:25
| ハンマー・ダルシマー
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昨日は協会のイベント、ツィンバロム・サロンがあった。参加者は少なかったが、ツィンバロムを間近に見、さわり、さらにハンマー・ダルシマーやハックブレットとの比較までした。協会活動充実のため、ちいさなイベントを積み重ねる。しかし、会員の1割しか興味を示さないイベントは批判の対象となるかもしれない。その点については、4月に行われる総会で意見を出していただくことになるだろう。
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by yt-aoki
| 2005-03-13 22:12
| 日本打弦楽器協会
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みつプロダクションの高橋さんに会った。多分亡くなる少し前の映像。
詳しい事情は知らないが、みつさんは2002年6月22日に55歳で亡くなった。そのみつさんに、数日前出会った。 放送大学の徳丸吉彦先生の講義(芸術文化政策 I)には関心をもっていたが、見るチャンスがなかった。それがちょっとしたきっかけから集中放送されていることを知り、たまたま時間が空いていたので見始め、見られない日には録画をするようになった。そして第10回、少数民族に関する芸術文化政策というテーマの日に、大阪大学の山口修先生とみつさんはゲストとして登場し、芸能を映像化するときの問題点などについて話していた。 実際のみつさんとの出会いは、25年以上も前にさかのぼる。私はまだ就職したての1年生だった。その日、何故みつさんが私の職場に来ていたのかも忘れたが、台風が近づいていて、昼食後には帰宅してよいということになった。遠距離通勤だった私達(といっても、他に誰がいたのか正確には覚えていないが)は、わけもわからず都心へ帰るみつさんの車に乗せられた。あの日のことはみつさんにとっても忘れられないことだったようだ。なぜなら、私達の職場の周りは排水が悪く、どこを通っても深い水溜りを通らなければならない。そのため彼は、ブレーキの利きが悪くなった車で、若い女性たちを送らなければならなくなったのだ。途中で同乗者は降りたのだが、私が利用する私鉄の駅は通らないため、私ひとりみつさんのオフィスまで行くことになり、台風一過の夕焼けの中を広尾から横浜の自宅へ帰った。 その後も音楽映像研究会に誘われ(私はすぐにやめてしまった)たり、仕事をお願いすることになったりと、時々お会いすることがあった。一度渋谷の西武デパートで偶然出会ったこともある。後で知ったことだが、みつさんは私の夫の、高校のクラブの先輩でもあった。また上司の友達であったため職場で電話を取り次ぐこともあり、上司が不在の時には近況を話したりもしていた。 ダルシマーを始めてまだ間もない頃、そうした電話でダルシマーのことを話す機会があった。さすがに民俗芸能の映像をたくさん撮ってきた人だけあって、すぐにどういう楽器かを理解し、その時だったかその後だったか、みつプロダクションで制作したシブクマール・シャルマというインドのダルシマー(サントゥール)奏者の映像があることを私に思い出させてくれた。「高橋光則(本名です)」と書いた年賀状をくださったこともあった。 ダルシマーに関わることはこの最後の1段落だけ。でも、みつさんのことは書いておきたかった。 ■
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by yt-aoki
| 2005-03-12 01:41
| 音楽
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CWA Newsが届いた。CWAとはCimbalom World Associationのこと。ハンガリーに本拠地を置くツィンバロム協会、日本風に言うなら世界打弦楽器協会だ。
以前から会員であったので、何度も受け取っているニュースだが、今回のはちょっと違う。 Membership Cardが入っている。昨年までは日本打弦楽器協会(JDS)が団体会員となり、CWAへの入会を希望した人にはコピーを配布していたのだが、今年から個人会員を取りまとめ、登録と会費送金をJDSが代行するという形に変えたのだ。 受け取るものはコピーであるかないかの違いだけ、またそれがハンガリーから直送されるか国内から届くかの違いだけだが、気分は違う。別に海外から届くから、直接海外とつながっているようでうれしいなどという話ではない。日本にも10人を超える会員がいるということがCWAに伝わったこと、多少なりとも個人会員を増やすことでCWAに貢献できることがうれしい。 今年CWAの世界大会が中国・北京で開催される。8回目にして始めてのアジア地域での開催だ。もちろん中国には揚琴という打弦楽器の伝統があり、多くの優れた演奏者がいる。だからこそアジア地域での始めての大会は中国であって当然だが、いつか日本でも大会を開催し、世界中の打弦楽器奏者を集めたいと思っている人もいる。そのための1歩を踏み出したのだ。もちろん中国大会には、日本からたくさん参加して欲しいと思う。 ■
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by yt-aoki
| 2005-03-10 21:50
| 日本打弦楽器協会
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昨日キムの練習曲Ja Ra Kae Hang Yawはパート3までいった。パート1、パート2は結構覚えられたのに、今回はだめだ。頭に入らない。面白い音型、新しいリズムパターンは頭に入る(ただ、手の動きが今までと違い、動かない)が、全体の音の流れが思い出せない。今回は、耳のシフトがうまく行かなかったようだ。思いがけない跳躍があると、実音で捕らえてしまい、そこからもう一度タイ音楽のドレミに(西洋音楽でいうなら移動ドに)置き換えなければならなかった。疲れていて集中力が足りなかったのかもしれない。
今月のレッスンをあと2回分約束した。今月末には京都在住でキムを長年やっていらっしゃる方に会いに行く。 ■
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by yt-aoki
| 2005-03-08 23:34
| キム
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待っていたDulcimer Players Newsがようやく届いた。年4回発行されているアメリカの雑誌。これを定期購読するようになって何年経っただろう。
1号だいたい50ページ前後だが、半分は広告だ。あまり読むところはない。CD評、見開きの演奏者紹介、何曲かの楽譜、イベント案内は常に掲載され、そのほかにマウンテン・ダルシマーやハンマー・ダルシマーについての記事が掲載される。広告は、楽器メーカーのものばかりでなく、ワークショップやフェスティバルなどの広告が多い。それらを見ていると、どういう人が講師あるいはゲスト・プレイヤーとして招かれているのかがわかる。 時には日本の情報も掲載される。私がハンマー・ダルシマーの練習用にとアレンジした「さくら」の楽譜も掲載してもらったし、ダルシカフェの井口さんによる茨城県美野里町で開かれたダルシマー&オートハープ・フェスティバルの模様も掲載された。今回のイベント広告の中には、CWAが北京で開催する大会もあった。 発行部数がどれくらいなのか、日本で言えばどのような雑誌に相当するのかわからないが、今回の号はVol. 31, No. 1で、なんと31年も続いているそうだ。日本から定期購読を申し込む場合、年間26ドル。例えば日本の書店で、この程度の雑誌を手にとって、値段が700円もしたら多分買わないだろうが、アメリカの状況がわかるという点では価値がある。 ■
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by yt-aoki
| 2005-03-03 00:09
| ハンマー・ダルシマー
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